飯田市リニア駅 市民提案  NO,56

飯田市 リニア駅 市民提案

地域の将来を考える市民団体、アルプスフォーラムに所属しています。

昨年、提案させて頂いた飯田市リニア駅の市民提案です。




0706リニアアルプス提案説明書

説明者 新井 優

  南信州アルプスフォーラムでは、全ての新幹線駅を現地調査し類型化しました。それらの先例に学び飯田のリニア駅を考えたとき、はっきりと言えることは、「コンコースを出た瞬間に一生脳裏に焼き付いて離れない」というくらい魅力ある景観を作り出さなければならないということです。

 今まで各地で出来ている郊外型の新幹線新駅はほぼ全て駅前は駐車場と交通機能だけが広がる地方性は感じられない駅ばかりです。幸い飯田のリニア駅は北口と南口が予定されています。北口と南口の役割分担をきちんと行い、リニアのスピード感を伊那谷に連続させて行く、伊那谷の魅力を最大限にリニアそしてスーパーメガリージョンに紹介して行く、リニアの恩恵を伊那谷の地域全てにつないでいく。そして伊那谷の地域全てでリニア開通を目標としてまちづくりの機運が渦巻き状に高まっていく。

 それでは、どうすれば魅力的な駅をつくることができるのか、検証していきたいと思います。ヒントとして、環境省の発表した「2050低炭素社会シナリオ」を下敷きにしたいと思います。未来の低炭素社会を2つに類型化しています。1つは「ドラえもん型」といわれる、「利便性・効率性・合理性・わかりやすさ・スピーディー・技術志向」といった社会。もう一つが、「サツキとメイ型」といわれる「ゆったり・のんびり・癒し・やすらぎ・スローライフ・自然志向」といった社会に類型化され、この一見正反対ともいえる2つ未来社会のイメージをどう落とし込んでいくかという視点も、この検討をわかりやすくしてくれると考えています。

このような考え方を実現するために、『私たちは三つのドアで構成するリニア駅』を提案します。ただし、今回の提案には環境共生や周辺の地域との関係はもちろん大切と思っていますが焦点がぼけるので、リニア駅の機能に絞って提案します。

 

  リニア本体およびリニア駅を伊那谷への“1st Door”と定義します。この“1st Door”の役割の多くを担うのは北口です。北口はリニアのスピード感を伊那谷につなぎながら、ストレスのない乗り換えの環境を整えます。

リニア駅周辺整備基本構想に位置づけられている「高度なトランジットハブ」を創造することはこの計画の一番のテーマです。「高度な」というのを丁寧に解釈する必要があると思っています。ここで、乗り換えに際して「4せず原則」を原則とします。「待たせず、悩ませず、歩かせず、濡らさせず」の4原則です。駅を降りたお客様に対して最大のもてなしとなります。できるだけ交通機能を集約して、来訪者が公共交通にうまく接続できなかった場合でも、タクシーやカーシェアリングなどにスムーズに切り替えられるような機能の集約化が必要です。

具体的には

  飯田発祥のラウンドアバウトにより車での来訪者は駐車場と駅の位置関係を車の中から一瞬にして理解できる。

  この駅になれた人は西側道路より最短距離で立体駐車場にアプローチ

  駅の真横にある立体駐車場に駐車機能を集約することで、四せずを実現するとともに、北口周りの緑化のスペースを最大限確保し、里山化する。

  交通機能をリングに集約化

  乗り合いバスは南口にも回って、伊那谷各地に向かう。

  駅本体のホームはガラス張りとして、伊那谷北部のV字渓谷の景観を車内で一望できる。

 

  さて、ここで『伊那谷らしさ』を考えたいと思います。

伊那谷はどういうところか?住んでいる私たちでさえ明快に説明しにくい地域だと思っています。国は地方の時代を掲げていますが、哲学者の内山節(たかし)氏は著書『いのちの場所』の中で、“文明は文化を滅ぼすというが、コンビニや大型スーパーで地域経済がボロボロになっても、滅ぼしきれないものがある。それは人々の間に残っている文化や風土。それらが次の力になる。”と書いています。

次に伊那谷の魅力の構造に着目します。天竜川が作り出した日本一の谷の両側に3000メートル級の山岳が連なる透明感にあふれる伊那谷ですが、実は多様な人々の暮らしのレイアー(階層)が重なっていて、一番下に底知れない文化や風土がある。

 この状態を現す「こずんどる・こずんでいる」という方言に着目しています。「こずむ」というのは平安時代の寄り集まって住む・暮らすに語源があるといわれていますが、上が透き通って、底に沈んでいる状態のことですので、伊那谷の魅力の構造そのものと言えるかもしれません。この「こずみ」の中にある伊那谷の魅力をわかりやすく伝えていくことをリニア駅で出来ないかと考えました。

  この伊那谷の本当の魅力への扉を“2nd Door”と定義します。

有史以来の伊那谷の幕開けである“1st Door”をリニアで手に入れたとしても、この魅力のひとつひとつにたどり着くための“2nd Door”を開ける仕掛けを用意することが重要です。この役割を担うのが南口です。

この南口については、「コンコースを出た瞬間に一生脳裏に焼き付いて離れない」空間が作り出せると考えています。来訪者を出迎えるのは、みどりの広場と広場に沿って配置される小規模な伊那谷らしい建築が並ぶウェルカムハウス群です。みどりの広場では、365日何かしらの地域イベントが開催され、そのフェスタ感・お祭り感がリニアのお客様を出迎えます。

  伊那谷の魅力の根源である“人々の間に残っている文化や風土”を目に見えるかたちとして地域の人々が伝えていく活動の場がウェルカムハウスです。バザールや市場、マルシェのように小さな建物にそれぞれの地域の人々が居て、暖かいおもてなしと口コミ的な生きた情報を伝えていきます。集約した大きな建物の中で効率的にモノを売ればいいと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、小さな建物が並ぶことで多くの各地域の人々が関わり、人と人がつながるチャンスを最大化します。ここは『人と人が出会う場所』です。

「モノ」と「ヒト」と「コト」が存在することで、伊那谷への“2nd Door”が開かれ、伊那谷へといざなう道が整います。この施設の魅力は当然ながら、地元伊那谷の人々にとっても魅力的であることが求められます。常に地元の人々でにぎわい、さらに来訪者との交流が生まれる、そんな場所とすべきと考えます。

  この仕組みを実現するには、様々な伊那谷のコンテンツがこの場所にあることですが、このウェルカムハウス群の考え方に基づいて、当事者性を持ったビジネスコンペのような取り組みにより希望者を募れば、若者をはじめ相当数の参加者や参加団体が集まる時代になっていると思います。

  この、ウェルカムハウス群に沿って乗り合いバスが停車すると共に、お迎えのレーンを用意しています。実は南口は伊那谷各地に向かうトランジット機能を備えています。

新幹線長野駅では、西口である善光寺口にトランジット機能を集約し、東口に駐車場とお迎えレーンがあります。人口10万人以上の都市で人口割りの大分類事業所数がNO.1という飯田市を筆頭に、伊那谷の各企業や観光施設、自治体、さらには全国に先行しさらに今後発展するであろう民泊農家など、家族的な送迎が極めて多く展開されることが予想されます。人と人のつながりがもたらす乗り換えという意味合いから「キス・アンド・ライド」と表現されることもありますが、この分野はもしかすると今後、公共交通以上に活況を呈する可能性があります。2次交通としてもウェルカムハウス群とあわせて、きちんとデザインしておくことが大切な視点となります。

  (短時間で平面図にて南口の具体的機能の説明)

 

  私たちが考えるリニア駅の最終目的として、“人々の間に残っている文化や風土”が実際にある伊那谷のそれぞれの地域とリニア駅が直接つながること。

 伊那谷のそれぞれの地域を“3rd Door”と定義すると、地域全体がリニア開通に向けて地域の魅力を高めていくまちづくりを興していくと共に、伊那谷に住む全ての人々がリニアと直接つながっている自覚が持てることが希望になって行けたらと思います。

つまり、リニア駅にある“2nd Door”と、実際の地域にある“3rd Door”は直接つながっていることになります。

 

  (まとめ)

“人々の間に残っている文化や風土”を伊那谷の魅力ととらえ、リニアから伊那谷の全ての地域に、楽しさと魅力の連鎖をつなげていく。伊那谷の全ての地域がリニア開通に向けて自分たちの地域のまちづくりを高めていくことを今回の提案の基本としたい。

『場づくりは関係性の中にある』と言います。リニア駅を単なる人が移動するトランジットの関係性のみでは無く、19世紀の鉄道発祥時代の駅にあったような人間のドラマ性を持った心と心をつなぐ関係性をデザインしていくことを是非怖がらずに進めてほしい。デザインは決まった形にお化粧するとか、トッピング的に何か添えるような小手先の話では無いはずです。その意味では今回の提案は、景観部会の中で副市長が言われた言葉をお借りすれば『哲学をどう描くか』というような視点で練り上げてきたものです。デザインの深い部分にあるべき『哲学』を皆でしっかりと共有することが何より重要と考えています。

最後に 『ち たち ちから』でまとめたいと思います。

ちーーーそこに住んでいる人々(地 血 乳 父 地球)ものを養育する力のあるもの

たちーーーくせ  生まれつき持っている性質や体質、資質

ちからーーくせが力になる